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第29話 奪い合うのは、愛か名誉か

last update Huling Na-update: 2025-11-26 21:06:14

 ──翌朝。

 レオンが教室前の廊下に足を踏み入れた瞬間、影が横切り──彼の前にすっと立つ。

「兄上。昨日のこと……僕は諦めません」

 声の主は、もちろんルカだった。

 レオンは額に手を当て、深いため息をつく。

「……ルカ……お前、めげないな……」

 その横で、静かに様子を見ていたハルが口を開く。

「ルカくん。君、ほんとにやる気なんだね」

「当然です。兄上は、僕が取り戻します」

 真っすぐすぎる視線に、レオンはぎょっとする。

「は? いや勝手に決めんな──」

「兄上。学園祭の推薦チーム模擬戦で、僕が勝ったら……兄上を取り戻します」

 レオンはわずかに眉をひそめた。

「は? お前、勝手に何言ってんだ……」

「あなたは、これまで誰にも負けなかった。剣でも、頭脳でも、家柄でも。でも、もし僕に負けたら? それは──今のあなたが、間違っているという証明になります。あなたが選んだハル=アマネが、侯爵家の血を継ぐ僕より劣ると証明されれば……きっと目が覚めます」

「……ふざけんな、勝敗でそんなこと決められるかよ」

 レオンが苛立ちを滲ませるその横で、ハルがさらりと口を開いた。

「じゃあ──僕たちが勝ったら、どうなるの?」

 ルカが口をつぐむ。

 ハルはその目をまっすぐ見返す。

「君がレオンを取り戻す権利を賭けるなら、こっちは誇りを賭ける。君が掲げた侯爵家の重みに、ふさわしい対価を払ってもらう」

「どういう意味です?」

「つまり、レオンの勘当を取り消してもらう」

「おい、ハル……別に、侯爵の座なんて──」

 レオンが焦りをにじませるが、ハルはきっぱりと断じた。

「君がいらなくても、ルカくんには失う痛みを知ってもらわないと、釣り合わないから」

 しばし沈黙。

 ルカは歯を噛みしめ──そして、小さく息を吐く。

「……侯爵の座は、僕の一存ではどうにもなりません。でも……この戦いの結果を、父に報告します。正々堂々と勝負して、それでも僕が負けたら──父も無視はできないはずです」

 こうして、血筋・名誉・そして愛を賭けた宣言が交わされた。

***

 聖ルミナス魔導学園の学園祭は、学園最大の催し。

 広場には特設ステージが組まれ、屋台や舞台演目、魔導技術の展示に品評会、さらには社交デビューパーティまで、多くの貴族や保護者が集う年に一度の大規模イベントだ。

 中でも最も注目を集めるのが──学園選抜
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